「あ、じゃあ、矢吹さんがレモネードに入れてるはちみつって……」

思い出したように梓葉がそういう。
バレてしまったか。
ほんと、かっこ悪い話だ。

「あぁ。そう。うちの蜂蜜。矢吹養蜂場」

「えっ!やっぱり……」

「ダサいよな、結局、変に安心するんだよね、自分ちの蜂蜜。祖母がよくこのシロップでレモネード作ってくれててさ。3年前にその祖母も亡くなって、その時実家に帰ったとき、形見としてビンごと持って帰ってきて。それからはずっと、仕事で疲れた時よく飲んでたんだ」

梓葉にこんなかっこ悪い話するのは気が引けるけど、知って欲しいって気持ちが今は大きい。

全部を、梓葉に知って欲しい。

「だからなんですね。私の目に狂いはありませんでした!矢吹さんがレモネードを作る姿、本当に大好きで。でもどうしてそう思うのかわからなくて。でもわかりました。今その話を聞いて、もっともっと、矢吹さんのこと好きになってますっ」

ほら、こういうことを何にも汚されていない綺麗な瞳で言うから。

「あんまり煽んないで」

そういいながら、彼女の頬を撫でると、またボッと顔を赤らめて。

「煽ってなんかっ……」

大切に壊さないようにと思う反面、今すぐ全部俺のものにしたいという欲望ももちろんあるわけで。

「梓葉と一緒なら、もう一歩踏み出してみようって思ったんだ。どうかな?」

もう一度そう聞くと、梓葉はコクンと頷いだ。

「私でよければ、連れていってくださいっ」

「よかった、ほんと、ありがと」

そう言って、彼女の体を引き寄せる。

もう、自分のことでいつまでも立ち止まってる場合じゃない。今、俺の腕の中にいる彼女を、全力で守ると決めたから。