相次ぐ引越しを、俺が今までずっと我慢して、机にかじりついて勉強していたのはなんだったのか。

父さんのようになるんだって、目標にしていた俺の気持ちは?

そんな気持ちばかりが押し寄せてきて。

その日から、俺は両親とまともに話すことはしなくなった。顔を合わせばいつも喧嘩ばかりで、そのことを祖父母にあたり散らした事なんてしょっちゅうで。

養蜂場と隣接している祖父母の家に引越すことになり、思い描いていた、目標としていた有名進学校ではない、田舎の高校に通うことになって。

全てに腹が立って仕方がなかった。
親の都合で散々振り回しておいて、やっぱり今までのは取り消しだ、なんて。

俺はそんなに聞き分けがいいほど、いい子じゃない。

高校入学と同時に、文武両道、容姿端麗、そんな完璧な人間を演じ、周りを見下しながら、父親や家庭へのストレスを、都合のいい異性との関係で紛らわす日々が出来上がっていった。

そんな風に過ごしながら、自分の息子よりも後継ぎを選んだ父親への腹いせかのように、有名私立大学入学と同時に、家を出た。



「……そうだったんですか。……あの、その、矢吹さんのお父さんは、どうして、突然、おじいさんの養蜂場を継ぐ気になったんですか?」

俺の淡々と話すはなしを、何度も頷きながら聞いてくれていた梓葉が、そう聞く。

「うん。病気、だったんだよね。田舎に引越したばかりの頃は、全然教えてもらえなくて。祖父も父親もそんな話しなかったんだ。だんだん弱っていく祖父を見て、ようやく気付いて、そのあとすぐに亡くなったんだ」

自分で話ながら、後悔の気持ちが押し寄せて来る。