「でもさ、いくらお詫びとはいえ、わざわざ手作りのレモネードをお隣さんに飲ませるか?」

「……うん、そこが疑問なんだよね」

あんなに綺麗な人たちばかり毎日相手にしている人が、私みたいなお子ちゃま相手にするはずないって、すぐに現実を見られていたのに。

昨日、矢吹さんがあんな風に家に招いてくれてレモネードを入れてくれたから。

私の中で、完全に火がついてしまったと思われる。

「しかも……レモネード、飲みたくなったらいつでもおいでって。ただの社交辞令、かな?」

「んー……」

結衣は腕を組みながら眉間にシワを寄せる。

「お、結衣がなんか難しい顔してる。珍しっ」

「うっざー、はまやんにはわかんねー大人な話してっからー邪魔すんな」

私たちの席に近づいてきた濱谷くんに、余計シワを寄せた結衣がそういう。

「で、なになに、なんの話」

隣の席の椅子を借りて座った濱谷くんが、興味津々で聞いてくる。

「えー。アズ、こいつに話していいの?」

結衣は嫌そうに濱谷くんを指差す。

こういうのって、男の人の意見も聞いた方がいいのかな。

濱谷くんとは去年から同じクラスで、誰彼構わずペラペラしゃべるような人じゃないのはよく知っているし。

「うん、濱谷くんの意見も聞きたい」

私が頷いてそういうと、結衣が「よし、わかった」と言って、丁寧に、濱谷くんに矢吹さんの話をしてくれた。