「おいおいアズ〜また寝不足か〜?」

「いっ、いたひよ、結衣っ」

急に両頬に痛みが走ったと思ったら、結衣に頬をグイーンと引っ張られていた。

パッと教室にある時計に目を止めると、もうお昼時間が始まっている時間。

「ほんっと最近ボーッとしてない?なんだなんだ、恋か?」

いつものように私の席に弁当を置いてから、前の椅子を反転させてこちらを向いて座る結衣。

「いや、恋って言うか……」

私は、お弁当を開いてお箸を取り出す結衣に、矢吹さんの話をする。

実は前からかっこいいなと思っていたこと、でも、女にだらしない人だったこと、だけど、レモネードを作る彼のことは素敵だと思うこと。

結衣は、弁当のおかずを口に頬張りながら、私の話を一度も止めたりせずに静かに相槌を打って聞いてくれた。

「それさ、恋だよ、アズ」

一部始終を聞いた結衣が、お箸をバシンと力強く置いてから、はっきりとそう言った。

「いや、いやいやいやいや!違う違う!私はただ、なんであんな冷めた風になっちゃったんだろうって疑問が……」

「相手のことをもっと知りたいって思うって、どう考えても恋だよ。矢吹さんがその、何、レモネード?を作ってる時の顔を見て、キュンってなるんでしょ?」

「うぅ、それは……」

恋だと認めたら、私が女たらしな人に惹かれたことになる。それは認めたくない。

でも、これが本当に恋だったらと思うと、途端に身体が熱くなって心拍数が上がる。