「それって、夏穂さんは矢吹さんのこと好きで、2人きりで話す口実にそんなこと言ってるだけなんじゃ……」
「いや、それはないよ。夏穂とは昔からそういうのまったくないから」
矢吹さんのその言い方が、まるで彼女は特別だと言ってるみたいでモヤモヤする。
「そんな風に思ってるの矢吹さんだけかもっ」
「本当だよ。高校の頃から彼氏一筋のやつだったから」
それでも、人の気持ちなんていつどう変わるかわからないよ。
「お願いだよ、梓葉。信じて」
矢吹さんが私の手を包み込んでそう言うので、コクンと頷くけれど。
内心、まだ不安だ。
また、仕事で会えない日々が続いたら、耐えられるだろうか。
学校と会社、思ってたよりもすごく距離を感じる。
私と矢吹さんの生きている世界って、思ってたよりも全然違うのかも、なんて。
*
「よかったじゃん。はまやんの誤解で!」
週明け、結衣と濱谷くんに矢吹さんとちゃんと話せたことを報告すると、結衣が嬉しそうにそう言った。
「うん。ふたりとも色々と相談に乗ってくれてありがとうね。あっ、そういえば、結衣、あのチラシもありがとう」
あの後、メッセージでもお礼を言ったけれど、改めて結衣にお礼を言う。
あの日、矢吹さんと話せたのは少なくとも結衣のおかげだ。
「いや〜親友としてあんなことしかできなかったけどさ。でも、キッカケになれて良かったよ」
結衣はそう言って少し照れたように手を後頭部に持っていった。



