-キーンコーンカーンコーン-

竜が俺に凛が好きだと打ち明けに来た日から、

早くも2ヶ月がたっていた。

俺は2ヶ月たった今も存在している。

直ぐに終わってしまうかもしれないと思っていたが、

意外と存在できている。

そして、今は7月ということもありみんな浮かれている。

「翔!おつー!」

「おつかれ、竜。」

「今日最終日だったけどテストどうだった?」

「まぁまぁかな。竜は?」

「いや…やべぇ、かも。」

竜は、はぁとため息をついた。

さすがに受験や就活の代でそれはやばいぞ。

そう思ったが俺も言えたもんじゃない。

だから言うのをやめた。

「そっか。あ、てか竜。お前は卒業したらどうすんの?」

「バイクとかいじるの好きだから、そういう関係の仕事したいなって思ってる。お前は?」

「俺は、動物の専門学校へ行こうと思ってる。」

竜は一瞬驚いたような顔をしていたが、

すぐさま笑顔になった。

「なんかお前らしいな。」

そうか、2人ともちゃんと将来決めてんだな。

翔は子供の頃から動物が好きなのだと、

前に話してくれた。

動物と触れ合っているとき、すっげぇ幸せそうだし

きっとお前に向いてるよ。

「頑張れよ、翔。」

俺はそういいニコッと笑った。

竜も、きっといい仕事が見つかるはずだ。

勉強は俺と一緒で出来ねぇし馬鹿だけど、

手はかなり器用な方だ。

高一のときに見せてもらったバイク、

あれ超かっこよかったもん。

「竜、お前も頑張れよ。」

応援してっから。

「俺ら、マジ頑張んないとヤベエよな。」

「そうだな。」

そんなことを暗い顔しながら話していると、

門前で呼ぶ声が聞こえた。

「おーい!翔!こっちこっち!」

声のした方を見ると雨乃がこちらに手を振っていた。

「絢音待たせてごめんね。」

「ほんと、マジ出てくんの遅いよー。」

「ごめんごめん。」

と翔は苦笑い。

この2人はほんと仲良いしお似合いだわ。

そんなことを考えていると竜がえ?っと不思議そうな

顔をしていた。

「ん?なに竜。どうかした?」

「あ、いや、お前って雨乃こと下の名前で呼んでたっけ?」

「あぁ。竜に言ってなかってね。俺たち付き合ったんだ。」

にっこりと微笑んで翔は言った。

「あ、なるほどな……って、え!?!?は!?!?」

いつから!?と竜はかなり驚いたようだった。

「えっと、竜が優真と話すって言って日。」

「まじかよ…人が必死になってる時に…。てか、知らなかったの俺だけ?え、凛ちゃん知ってた?」

凛はにっこりと微笑み、

「うん。次の日学校行ったら絢ちゃん報告しに来てくれたよ!」

と嬉しそうに言った。

「そうなんだ…。翔もしに来てくれたっていいじゃねぇか!」

「ごめんごめん。優真には報告しに行ったんだけどね。」

とこれまた苦笑い。

そう、次の日の夜。

翔は雨乃を連れて報告に来てくれた。

付き合ったのだと。

雨乃絢音(あまの あやね)。

こいつは凛の親友だ。

高1の時に同じクラスで凛と仲良くなったらしい。

翔から報告を受けた時、びっくりはしたが

同時に嬉しい気持ちとあった。

お似合いの2人だとずっと思っていたから。

「えー知らなかったのマジで俺だけかよ…。」

竜はあからさまにショックを受けていた。

「言うタイミングがなかなか無くてさ。」

と、これまた翔は苦笑い。

「で、今から凛ちゃんたちとタブルデートってか?」

「違う違う!何拗ねてんのよ!ウケんだけど!」

不服そうな竜に対し雨乃は大笑い。

「絢音。やめてやってよ。実は話したいことがあってさ。これから5人でカフェいかない?」

「いいよ!」

「俺も!」

「おっけー。」

全員がいいと言ったのでカフェ行くことにした。

高校から徒歩15分くらいの所にsweetpinkというカフェがある。

その他は、コンビニやスーパー、ファミレスなどが建ち並んでいる。

俺達の高校の生徒は基本的にファミレスかカフェに溜まっている。

-カランコロン-

「いらっしゃいませ!」

「5人です。」

「5名様ですね!あちらの窓際のお席へどうぞ!」

俺たちは案内された席へ座った。

「お決まりになりましたらベルでお呼びください!」

ぺこりと頭を下げ店員はいなくなった。

「話す前になんか頼もうぜ!」

「そうだね。」

みんなワイワイとメニューを見始めた。

この店来るの久々だな。

凛とデートで何回か来たことがあった。

凛は毎回モンブランを頼んでいた。

そういや、俺がジュース倒して凛の服にかけたこともあったけ。

あの時怒られることを覚悟してめちゃくちゃ謝ったけど、

凛のやつ一切怒らず、笑顔でいいよいいよって許してくれたんだよな。

懐かしいな。

そんなことを考えていると横からつんつんと腕をつつかれた。

「どうした?」

「ゆーくんは何食べるの?」

凛はそう言うと俺をじっと見つめていた。

「あー俺はいらないや。ありがとな。」

そう伝えると今度は心配そうな顔をして

「4月頃からデート行っても何も食べたりしないけど何処か具合でも悪いの?大丈夫?」

と聞かれた。

やっぱ不審に思うよな。

けど、正直に言ってしまうと幸せな時間は一瞬にして終わってしまう。

だから絶対に言えない。

というか、俺が言いたくないだけ。

凛と離れたくないから。

だから、俺はとっさにダイエットをしていると答えてしまった。

「ダイエット?ゆーくんは太ってないよ?」

「あ、いや、そう見えるだけで結構脂肪ついちまったんだよな…はは。」

「そうなの?」

うん、そう。と笑うとそっか!と笑ってくれた。

良かった…信じてくれた。

嘘ついてごめんな。凛。

「凛は何食うの?」

「私はねぇ、いつものモンブラン!」

やっぱそれ食うか。

「またそれかよ。よく飽きねぇな。」

ははっと笑うと、

「えへへ。だって美味しいんだもん。」

そう言って凛は笑った。

「呼び出し押すよー。」

翔が呼び出しを押してくれた。

各々が注文を終えたところで翔が話し始めた。

「えっと、話っていうのが8月の上旬にあるお祭りのことなんだけど。」

あ、もうそんな時期か。

「祭り?祭りって毎年恒例の地元のあの祭り?」

「そうそう。今年は5人で行かないかなって思って。」

どうかな?と翔は俺たちに笑顔で聞いてきた。

「え、なに。カップルとカップルで俺だけはみご?えー。」

「いや、拗ねんなし!」

口を尖らせ拗ねる竜にすかさず雨乃がツッコむ。

「去年まではさ、凛と優真くん2人で言ってたじゃん?
けど、今年は凛もこんな状態だし5人で行くのはどうかなって、私は思ったの。超ーいい考えじゃない?」

「ま、それも悪くなさそうだし、のった!」

「竜くんナイス!そう来なくっちゃ!」

3人が嬉しそうにしているなか、凛だけは不思議そうな顔をしていた。

「ねぇねぇ、絢音ちゃん。こんな状態ってどういうこと?私はいたって普通だよ?」

俺はヒヤッとした。

だが、ヒヤッとしたの俺だけじゃないらしい。

他の奴らも焦りだしていた。

「り、凛。あのほら、凛が変っていう意味じゃなくて、
この前さ、凛言ってたでしょ?入試の勉強大変なんだって!それのことだよ!」

「あ、なるほど!そういうことか!ごめんごめん。」

えへへと凛が笑うとみんなホッとした顔をした。

あっぶねぇ…。

マジで焦った。

全員が一安心したところでちょうどケーキと飲み物がきた。

「じゃ、注文したものも来たし、食べながら話そっか。」

みんなケーキを美味そうに頬張っている。

美味そう。食いてぇな。

「んじゃ、話の続きたけど、行くのは決定で場所と時間なんだけど19時の鳥居前でどう?」

「いいんじゃねぇの?あ、花火は?見ねぇの?」

竜の問に雨乃は見るわよ!と少し怒り気味にツッコんだ。

「だよな!あれ見ねぇと祭りきたー!って気しねぇもん!」

竜は目をキラキラ輝かせていた。

俺らの地元のお祭りは小さい神社で行われるが、

屋台は多く、花火も豪華だ。

ほとんどの人が花火を楽しみにやってくる。

俺も楽しみだ。

「んじゃ、19時に鳥居前集合で決まりで。絢音は18時40分くらいに迎えにいくら待っててね。」

「了解!」

そんな2人の会話を聞いていた竜は、

勢いよく凛の方を見た。

「凛ちゃんは俺が迎えに行こうか?」

チラッと凛を見ると

「大丈夫だよ!私はゆーくんが迎えに来てくれるから!ね?ゆーくん!」

とニコッと微笑まれた。

「うん。当たり前。」

そう言うと竜はチェツっと不服そうな顔をしていた。

悪ぃな竜。

こいつはまだ俺の女だから。

「はいはい、竜くん拗ねないの〜。」

「翔、お前バカにしてるな…。」

「してないしてない。はい、お会計行くよー。」

翔は絢音の手を引きスタスタと行ってしまった。

「ゆーくんも行こ!」

俺は凛に手を引かれ歩き出した。

「チッ!皆してイチャイチャしやがってー!」

竜はプリプリ怒っていたが俺たちは気にせず店を後にした。

この後はなんやかんや話して遊んで盛り上がり21時くらいまで一緒にいた。