文化祭2日目。
「文化祭2日目スタートします。」
放送と共に門が開いた。
今日もたくさんの人がやってきた。
今日は凛は午後からが担当だから午前中に俺と回ることになっている。
そのため俺は教室まで凛を迎えに行った。
「凛。」
「あ!ゆーくん!」
名前を呼ぶと嬉しそうにこちらへ走ってきた。
可愛い。犬みたいだ。
なんて思って見ていると、凛の体がふらりと傾いていった。
まずい!
「凛!!」
俺が呼ぶと同時に誰かが凛を受け止めた。
「ちょっと、凛。大丈夫?躓いたの?」
「絢ちゃん。ありがとう。ううん。少しフラっとしちゃった。」
どうやら雨乃だったようだ。
「え…まじ?体調悪い感じ?」
「ちょっと寝不足なだけだよ。大丈夫。」
「無理はしちゃダメだかんね!ゆーくんと回るんだっけ?」
「うん!」
雨乃は、はぁっとため息を1つついた。
「なら、何あったら私に連絡してよね。わかった?」
「え?ゆーくんいるし大丈夫だよ!心配しすぎ!」
「ダメ!どうせ春野1人じゃなんにも出来ないんだから。」
凛は、頬っぺを膨らませ、
えーそんなことないのに!と不貞腐れているが、
雨乃の言っていることは間違っていない。
俺は本当に何もしてやれない。
「とにかく、私に連絡入れなさい。」
「分かったよ。」
凛は雨乃に押し負けし渋々頷いた。
「よし。じゃ、行っておいで。」
「行ってきます!ゆーくん行こ!」
「おう。」
俺は凛と手を繋ぎ教室を後にした。
さっきのがあったから俺は凛が心配でしかたなかった。
「凛、大丈夫か?」
「ん?大丈夫大丈夫!」
「けど、寝不足って…。」
「全く寝れてないとかでは無いよ!ただちょくちょく起きちゃうってだけ。」
ゆーくん心配しすぎ!と笑われてしまった。
それならいいのだが。
俺は不安が拭えぬまま凛の隣を歩いた。
「これしよ!」
凛の声でハッと顔をあげるとボール投げコーナーと書いてあった。
「ボール投げ?」
「うん!そう!あのカゴにボールが入ったら景品が貰えるんだよ!ほら、よくお祭りとかにあるでしょ?」
あ、あれか。
ちゃんとした名前は知らねぇけど、
口の中に入ればOKってやつだよな。
「いいよ。」
「ヤッター!1回お願いします!」
凛は嬉しそうにお金を渡した。
「はーい!では、ボールどうぞ!」
「ありがとうございます!」
ボールは全部で5球。
俺は隣で静かに見守った。
「残り2球ですね!頑張ってください!」
はい!と元気に返事を返した凛。
「凛。上からいくんじゃなくて、下から優しく投げてみろ。入るはずだから。」
「え、うん。」
アドバイスをすると、見事に2球とも入った。
「やったー!」
「おめでとうございます!2球なので、こちらの黄色のケースから好きな景品を1つお選びください!」
うーんと凛はかなり悩んでいる様子だった。
「あ!これ!見てゆーくん!可愛い!これにする!」
そう言って見せてきたのは猫のぬいぐるみだった。
なんだっけそれ。
たしか…あ、癒し猫。だっけ?
「あぁ、可愛いな。」
ニコニコと2人で笑っていると後ろから、
えっ、と声が聞こえた。
へ?と凛が振り向くと受付をしていた女の子がびっくりした顔をしていた。
「あ、え、えっと、ゆ、ゆーくん?」
かなり戸惑っていた。
「あ、私の彼氏です!優真なのでゆーくんって呼んでます!」
相手の子は更に困惑した顔になった。
「か、彼氏さん…や、ですが、え?」
まずい。これは変なことになりそうだ。
そう感じた俺は、行くぞと凛の手を繋ぎ足早に廊下へ逃げた。
「え、あ、ちょっとゆーくん!」
凛の声も無視してひたすら歩いた。
怖かった。
あのまま会話を続けて凛に全てがバレることが。
「…ん!…くん!……ゆーくん!!」
ハッとして足を止め振り返ると凛はこちらを困った顔で見ていた。
「あ、悪ぃ。」
「痛かったよ。どうしたの、急に。」
「…。午前の時間短いのに凛との時間取られたくなくてつい…。ほんとごめん。」
俺は、てきとうな嘘をついた。
「ふふ。なにそれ。ゆーくん可愛い。」
「可愛くねぇし。」
まぁ、時間を取られたくないというのは
本当のことだけど。
「んで?次どこいくの?」
「次はね…体育館での出し物見に行こ!」
「あれ?今日は食わねえの?」
「うん。お腹すいてないんだよね。」
やはり体調が悪いのだろうか?
少し心配になった。
「あんま無理すんなよ。」
俺はそう言い凛の手を引き体育館へ向かった。
着いた頃には体育館ではもう既に何個か出し物が終わっていた。
席はちらほらと空いていた。
「ゆーくん、前の方行こ!」
俺の手を引っ張りグイグイと進んで行った。
「間に合った〜!」
凛は嬉しそうにポツリと呟いた。
「誰か出てんの?」
「あれ?ゆーくん聞いてない?絢ちゃんと翔くんがダンスで出るんだよ。」
「そうなんだ。」
いや、初耳なんだけど!?
あいつら、そんな話してなかったし。
あ、てか、だからか!
ちょいちょい放課後残るとか言ってたの。
俺にも教えてくれたって良かったじゃねぇか。
「続きまして、絢音&翔のお2人です!」
モヤモヤとしているとアナウンスが流れた。
体育館は大きな拍手に包まれた。
「絢ちゃーん!」
凛が大きな声で名前を呼んだ。
他にもちらほら声援を送っている人がいた。
「翔!」
聞こえるはずなどないが俺も呼んでみた。
届いたかな?
俺の声援。
舞台の上でダンスをしている2人はとてもかっこよくて見入ってしまう。
軽快なステップで楽しそうにかっこよく踊る2人はまるでプロのようだった。
1ステージ15分の短いものではあるが見応えのあるステージだと思った。
幕が下がると同時に再び大きな拍手に包まれる。
あいつらダンサーでも目指せば良かったのに。
なんてボーッと考えていた。
「とっても良かったね!2人ともかっこよかった!」
凛は俺の隣で嬉しそうにはしゃいでいた。
「ゆーくんありがとうね!そろそろ戻ろっか!私たちの担当の時間だし。」
「おう!そうだな。」
もうそんな時間かと思うと同時に別にこのまま凛といてと問題ないのにと思ってしまう。
戻ったところで俺に担当などないのだから。
そう思ってもそんなことを言えば怪しまれてしまう。
だから、俺はクラスの出し物の所へ戻ることにした。
戻る道中はさっきのダンスの話をして歩いた。
「あ、ゆーくん着いたよ!じゃ、また放課後ね!」
「おう、じゃぁな。」
そう言って見送った凛の後ろ姿が少しふらついているような気がした。
あいつ大丈夫なんだろうな?
俺は少し嫌な予感がした。
「文化祭2日目スタートします。」
放送と共に門が開いた。
今日もたくさんの人がやってきた。
今日は凛は午後からが担当だから午前中に俺と回ることになっている。
そのため俺は教室まで凛を迎えに行った。
「凛。」
「あ!ゆーくん!」
名前を呼ぶと嬉しそうにこちらへ走ってきた。
可愛い。犬みたいだ。
なんて思って見ていると、凛の体がふらりと傾いていった。
まずい!
「凛!!」
俺が呼ぶと同時に誰かが凛を受け止めた。
「ちょっと、凛。大丈夫?躓いたの?」
「絢ちゃん。ありがとう。ううん。少しフラっとしちゃった。」
どうやら雨乃だったようだ。
「え…まじ?体調悪い感じ?」
「ちょっと寝不足なだけだよ。大丈夫。」
「無理はしちゃダメだかんね!ゆーくんと回るんだっけ?」
「うん!」
雨乃は、はぁっとため息を1つついた。
「なら、何あったら私に連絡してよね。わかった?」
「え?ゆーくんいるし大丈夫だよ!心配しすぎ!」
「ダメ!どうせ春野1人じゃなんにも出来ないんだから。」
凛は、頬っぺを膨らませ、
えーそんなことないのに!と不貞腐れているが、
雨乃の言っていることは間違っていない。
俺は本当に何もしてやれない。
「とにかく、私に連絡入れなさい。」
「分かったよ。」
凛は雨乃に押し負けし渋々頷いた。
「よし。じゃ、行っておいで。」
「行ってきます!ゆーくん行こ!」
「おう。」
俺は凛と手を繋ぎ教室を後にした。
さっきのがあったから俺は凛が心配でしかたなかった。
「凛、大丈夫か?」
「ん?大丈夫大丈夫!」
「けど、寝不足って…。」
「全く寝れてないとかでは無いよ!ただちょくちょく起きちゃうってだけ。」
ゆーくん心配しすぎ!と笑われてしまった。
それならいいのだが。
俺は不安が拭えぬまま凛の隣を歩いた。
「これしよ!」
凛の声でハッと顔をあげるとボール投げコーナーと書いてあった。
「ボール投げ?」
「うん!そう!あのカゴにボールが入ったら景品が貰えるんだよ!ほら、よくお祭りとかにあるでしょ?」
あ、あれか。
ちゃんとした名前は知らねぇけど、
口の中に入ればOKってやつだよな。
「いいよ。」
「ヤッター!1回お願いします!」
凛は嬉しそうにお金を渡した。
「はーい!では、ボールどうぞ!」
「ありがとうございます!」
ボールは全部で5球。
俺は隣で静かに見守った。
「残り2球ですね!頑張ってください!」
はい!と元気に返事を返した凛。
「凛。上からいくんじゃなくて、下から優しく投げてみろ。入るはずだから。」
「え、うん。」
アドバイスをすると、見事に2球とも入った。
「やったー!」
「おめでとうございます!2球なので、こちらの黄色のケースから好きな景品を1つお選びください!」
うーんと凛はかなり悩んでいる様子だった。
「あ!これ!見てゆーくん!可愛い!これにする!」
そう言って見せてきたのは猫のぬいぐるみだった。
なんだっけそれ。
たしか…あ、癒し猫。だっけ?
「あぁ、可愛いな。」
ニコニコと2人で笑っていると後ろから、
えっ、と声が聞こえた。
へ?と凛が振り向くと受付をしていた女の子がびっくりした顔をしていた。
「あ、え、えっと、ゆ、ゆーくん?」
かなり戸惑っていた。
「あ、私の彼氏です!優真なのでゆーくんって呼んでます!」
相手の子は更に困惑した顔になった。
「か、彼氏さん…や、ですが、え?」
まずい。これは変なことになりそうだ。
そう感じた俺は、行くぞと凛の手を繋ぎ足早に廊下へ逃げた。
「え、あ、ちょっとゆーくん!」
凛の声も無視してひたすら歩いた。
怖かった。
あのまま会話を続けて凛に全てがバレることが。
「…ん!…くん!……ゆーくん!!」
ハッとして足を止め振り返ると凛はこちらを困った顔で見ていた。
「あ、悪ぃ。」
「痛かったよ。どうしたの、急に。」
「…。午前の時間短いのに凛との時間取られたくなくてつい…。ほんとごめん。」
俺は、てきとうな嘘をついた。
「ふふ。なにそれ。ゆーくん可愛い。」
「可愛くねぇし。」
まぁ、時間を取られたくないというのは
本当のことだけど。
「んで?次どこいくの?」
「次はね…体育館での出し物見に行こ!」
「あれ?今日は食わねえの?」
「うん。お腹すいてないんだよね。」
やはり体調が悪いのだろうか?
少し心配になった。
「あんま無理すんなよ。」
俺はそう言い凛の手を引き体育館へ向かった。
着いた頃には体育館ではもう既に何個か出し物が終わっていた。
席はちらほらと空いていた。
「ゆーくん、前の方行こ!」
俺の手を引っ張りグイグイと進んで行った。
「間に合った〜!」
凛は嬉しそうにポツリと呟いた。
「誰か出てんの?」
「あれ?ゆーくん聞いてない?絢ちゃんと翔くんがダンスで出るんだよ。」
「そうなんだ。」
いや、初耳なんだけど!?
あいつら、そんな話してなかったし。
あ、てか、だからか!
ちょいちょい放課後残るとか言ってたの。
俺にも教えてくれたって良かったじゃねぇか。
「続きまして、絢音&翔のお2人です!」
モヤモヤとしているとアナウンスが流れた。
体育館は大きな拍手に包まれた。
「絢ちゃーん!」
凛が大きな声で名前を呼んだ。
他にもちらほら声援を送っている人がいた。
「翔!」
聞こえるはずなどないが俺も呼んでみた。
届いたかな?
俺の声援。
舞台の上でダンスをしている2人はとてもかっこよくて見入ってしまう。
軽快なステップで楽しそうにかっこよく踊る2人はまるでプロのようだった。
1ステージ15分の短いものではあるが見応えのあるステージだと思った。
幕が下がると同時に再び大きな拍手に包まれる。
あいつらダンサーでも目指せば良かったのに。
なんてボーッと考えていた。
「とっても良かったね!2人ともかっこよかった!」
凛は俺の隣で嬉しそうにはしゃいでいた。
「ゆーくんありがとうね!そろそろ戻ろっか!私たちの担当の時間だし。」
「おう!そうだな。」
もうそんな時間かと思うと同時に別にこのまま凛といてと問題ないのにと思ってしまう。
戻ったところで俺に担当などないのだから。
そう思ってもそんなことを言えば怪しまれてしまう。
だから、俺はクラスの出し物の所へ戻ることにした。
戻る道中はさっきのダンスの話をして歩いた。
「あ、ゆーくん着いたよ!じゃ、また放課後ね!」
「おう、じゃぁな。」
そう言って見送った凛の後ろ姿が少しふらついているような気がした。
あいつ大丈夫なんだろうな?
俺は少し嫌な予感がした。

