岩泉君の部屋で目覚めた私は、昨夜飲み慣れない日本酒で麻痺していたらしい羞恥心を取り戻し、静かに悶絶していた。

 何故静かになのかといえば、多分絶対全裸の岩泉君が、私を抱き締めた状態で寝息をたてていらっしゃるからだ。

 言うまでもなく私も全裸だし、こうなった経緯も全て憶えている。だけど、この状態にどうやって耐えていたかがまるでわからない。恥ずかし過ぎて発狂しそう。

 岩泉君が起きたらもっと恥ずかしいからおとなしくしているわけだが、いつまでもこのままではいられない。

 どうしよう。服はどこで脱いだっけ?さすがに全裸で歩き回るのは無理だ。一刻も早くこの状態から逃げ出したいけど、勇気が出ない。

 よし‥‥この向き合った状態から寝返りをうってみよう。岩泉君が寝たままなら、そっとベッドから出て逃げる。岩泉君が起きたら、寝たふりして彼が部屋を出ていくのを待つ。

 どうか起きませんように!という願いを込めて、極力刺激を与えないよう気を付けながら岩泉君に背中を向ける。

「‥‥‥‥ん?」

 ああああ!しくじったー!やはりベッドから飛び出して全裸ダッシュが最適解だったか!こうなったら、寝てるふりで乗り切るしかない。

 私の体に回されていた腕を一瞬緩めるとみせかけて、より強く拘束されてしまう。岩泉君は私の後頭部に頬を擦り寄せ、あろうことか深く息を吸い込んだ。

「はあああ‥‥しあわせ」

 まじか‥‥‥‥

「俺の椿‥‥かわいい‥‥大好き」

 甘い言葉を延々と浴びながら後頭部へのキスが繰り返される。誰か‥‥本当に助けて。

 どれくらい我慢の時間が続いただろうか。彼もようやく満足してくれたのか、背後で上体を起こす気配がして、ほっと息をついた‥‥次の瞬間、耳をがぶりと食べられた!?

「耳が真っ赤だよ?寝たふりなんかしてないでこっち向いて?」

 無理。絶対無理。恥ずかし過ぎる。体を丸めて布団を頭からかぶり、無駄な抵抗を試みる。

「そんな意地悪なことするならまた襲っちゃうよ?俺は嬉しいけど‥‥本当にいいの?」

 岩泉君が体を擦り寄せてくる。さっきから太ももに感じていたそれは当然あれで、これはつまり、それをあれして、あれこれするってことで‥‥‥‥

「ごめんなさい!もう勘弁して下さい!」

「おはよう」

 岩泉君が色気たっぷりに朝の挨拶をし、布団ごと私を抱きしめた。

「ううう‥‥おはようございます」

「ふふ‥‥椿は本当、かわいいね」

 死ぬ。恥ずか死ぬ。