恋の病に、堕ちてゆく。

「加奈ちゃんはこの映画には共感できないよね」

男女が発する甘い音に上乗せするようにして青波は話しかけて来た。


「共感できないです」

「俺も」

そうなんだ、青波も共感できないんだ。


「例え結ばれても、男は一生、十字架を背負っていかなければならない。彼女を誘拐した事実は消せないからね。誘拐されて彼女が傷ついた現実も消せないし」


「彼女は全て許してくれるんじゃないですか。誘拐犯を好きになってしまったんだし、きっと許してくれますよ」


恋は盲目と言うしね。


「俺は加奈ちゃんに、許して欲しいとは頼まないよ」


「…なにを言われても許せないので大丈夫です」


許せるわけない。彼らが捕まって刑を全うした後でも、許すことはできないだろう。