恋の病に、堕ちてゆく。

奥歯を噛み締めて耐える。

軟膏を塗られているようだけど、それさえ猛烈に染みる。

この痛みが引くまで、全力で走れないし、逃げられないだろうーーそういうこと?

私を逃さないために痛めつけて、しばらくは大人しくさせたいのかも。その裏をかきたいけれど、残念ながら逃げ出す気力が今はない。


「よし、次は胸の音を聞かせて」

手際よく包帯が巻かれた後、私の正面に回ってきた。

いい香りがした。
私好みの甘ったるい香水で、もっと近付きたくなる香りだ。


胸に聴診器をあてられたり、血圧を計る機械を腕に巻かれたりした。

「大丈夫、どこも異常はないわ。ご飯もちゃんと食べられた?」

「はい」

「そうよね。青波の料理は美味しいものね」

この人も、彼の料理を食べたことがあるんだ。
そんなどうでもいいことを思った。