恋の病に、堕ちてゆく。

青波は先生との昔話をしてくれた。

「先生は仕事で重大ミスをして、何年も落ち込んでいた。次第に彼女の心は壊れていった。たまに相談に乗っていた俺のことをいつしか、恋人と認識するようになってしまった。否定すれば、彼女の心が完全にダメになってしまう気がして俺は放っておいたんだ。だけど俺に対しての要求はエスカレートしてきて、それには応えられないと正直に告げた。俺は相談相手以上の関係になるつもりはなかったから」

それって付き合っていないってことだよね?最初から最後まで先生の一方通行だったんだ。心を病んだ先生が見た幻だ。

「最初から距離をおくべきだった…」

「本当に先生のことは、なんとも思っていないのですね?」

「うん、今も昔も気持ちは変わらないよ」

その言葉が、聞きたかったんだ。
良かった…。

「青波さんに今、恋人はいますか?」

「いないよ」

即答だった。

「本当に?」

「うん」


恋人がいないのなら告白してもいいのかな?
迷惑にならないよね?

想いを伝えないと、始まらない。このままお礼だけでサヨナラはしたくない。
次会えるまでまた1年かかる可能性だってある。

そんなの嫌だ。
思い切って口を開く。


「私、青波さんのことがーーす、えっ!?」


痛いほどに青波さんは私の手を握った。


「その言葉を聞く前に、最後にひとつだけ加奈ちゃんに言わなきゃいけないことがあるんだ」

青波は感情の読み取れない表情で淡々と言った。