恋の病に、堕ちてゆく。

返事の代わりに、頭の上に手を置かれる。

「たくさん怖い思いをさせてごめんね。一応、言い訳をすると、俺たちが持っていた銃は全て偽物だったからね」

「え?」

思わず青波を見上げる。


「加奈ちゃんに本物を向けるわけないでしょ」

「……本物と思って、怯んでました」

「そりゃぁ誘拐犯だからね、怖がらせないと」

こんな良い誘拐犯はいないのにね。
3人とも名演技で疑う余地がなかった。


「銃で脅したこともあったし、俺のこと嫌いになったと思ってたけどね。毎日、メールありがとう」

ちゃんとメールが届いていて良かった…。
伝えたいことはたくさんあるのに本人を前にすると、言葉が出てこない。いっぱいいっぱいだ。

「青波さんのこと、嫌いなわけないです。もう怪我は治りましたか?」

「もちろん。加奈ちゃんの背中はどう?」

「もう、跡も無くなりました」

「良かった」

優しく微笑んだ青波は、私の肩に手を置いてベンチに座るように促した。