恋の病に、堕ちてゆく。

非現実の生活で起きた感情の変化など、一時的なものだと自分に言い聞かせていた。


「吊り橋効果ねぇ。危険な状況下で敵から守ってくれた青波さんはヒーローだもんね。でも出逢い方を変えたいとかさ、たられば言ってても過去は変わらないし、だったら2人の特別すぎる出逢いに感謝すべきだと思うなあ。誘拐でなければ、たぶん2人の道は交じり合わなかったかもだし」


「特別すぎる出逢い…」

四季の表現は素敵だ。


「あ、そろそろ行かないと。ほら、説明会に美男子が居たほうが受験率も上がるでしょ?」

腕時計を見てから先程の手帳をバッグにしまった。そして空のマグカップを手に取る。


「すみません、お忙しいところ…」

「いえいえ。慌ただしくてこっちこそごめん」

「四季さん、これまでも今日も、本当にありがとうございました!」

私も立ち上がり、頭を下げる。
私を傷つけないための嘘をついてまで誘拐犯を演じてくれてありがとう。

「じゃ、またね」

極上のスマイルでウインクを飛ばした四季は早々に立ち去った。

"またね"
次もあるかのようなその表現は、彼のキラキラとしたウインクよりも私の心に届いた。