恋の病に、堕ちてゆく。

「加奈、もう君は日常に戻っていいんだよ。青波くんたちのことも事件のことも早く忘れるんだ」

「それは分かってるけど…」

「けど?」

ーー青波さんに、会いたいの。

そうは言えなかった。

伝えてしまえば、余計に青波さんと会わせてもらえなくなる気がした。

「なんでもないよ」

「そうか?お母さんの意識も戻ったし、お祝いしないとな。加奈は頑張ったから、なんでも好きなものを買ってあげるよ」

「ありがとう、考えとく」

考えても答えは変わらないけどお父さんの好意を無駄にはしたくない。

なにもいらない。ただ青波に会いたいだけだ。

青波にとっては仕事という1つの任務が終わった今、もう私のことなど思い出さないかもしれない。

それでも会いたい。

ああ、あのペンはやっぱり借りたままにしておくべきだったな。会う口実にできたのに…。