恋の病に、堕ちてゆく。

お母さんは少し話をするとすぐに眠ってしまったが、お医者さんはもう安心だと言ってくれた。

青波さんたちにも報告できたらいいのにな。


「良かったね、お父さん」

「お父さんのせいで本当にごめんな」

帰りの車の中で、お父さんは何度も謝った。私にだって善悪の判断はつくし、お父さんに非があるとは思えなかった。

「なんで、お父さんだったの?新薬の開発を担当している研究者は、たくさんいるのに」

犯人グループは何故、私たち家族を狙ったのだろう。

「内容までは言えないが、お父さんの研究を悪く思う集団が起こしたことだ。警察の話だと、奴らは家族や友人など大切な人をみんな亡くしてるらしい。今更、新薬を開発しても自分の大切な人は戻って来ないという、やり場のない怒りから犯行に及んだとのことだが…」

「なにそれ!ただの八つ当たりじゃん」

大切な人を亡くした経験があるのなら、人の命の重みも理解しているはずなのに。

「理不尽に家族を失った奴らの悲しみはお父さんには想像することしかできないけど、きっと気が狂ってしまったのだろうね。自分が、自分でいられなくなったのだと思う」