恋の病に、堕ちてゆく。

「3月1日にお父さん宛の脅迫状が届いた。いますぐ研究を中止しなければ、おまえを殺すという文言だった。私はすぐにお母さんと加奈に連絡しようと思ったが脅迫状が届いた同時刻、お母さんは買い物途中で階段から突き落とされ、加奈は男たちに拉致された。それからお母さんは病院に搬送されたが意識は戻らず、加奈は車で拉致されたところで警察に保護された」

そうなんだ。私、一度は警察に保護されていたんだ。薬品を嗅がされて意識が飛んでいたから、全然覚えてないや…。


「加奈にはお母さんが目を覚ますまで秘密にしておきたいという私の希望で、青波くんたちが協力してくれた。誘拐という怖い思いをさせて、申し訳なく思ってる」

「それはもういいの、終わったことだから」

「…加奈の状況は逐一、青波くんが報告してくれた。私からの2回目の電話は加奈の元気がないから、話してあげて欲しいと青波くんに頼まれたんだ…彼は本当に優秀だよ」

2回目の電話?
先生と青波が付き合っていたと聞いて、落ち込んでいた時だ…。お父さんごめん、誘拐とは関係ないことが原因だったんだ。

「私が、古典と数学が苦手ってことも教えたでしょう」

「ああ。学校には病気で療養中と言ってあるから、またすぐに通えるよ」

学校か…。もう日常に戻れない気がしていたから、勉強ばかりで退屈な学校生活をこれからも送れると思うと、素直に嬉しい。些細なことに有り難みを感じられるようになった。