恋の病に、堕ちてゆく。

「…ごめんね」

そう吐き出され、参考書を閉じて四季を見ると、真顔だった。

水族館の行き帰りの車の中で、外を眺めている時の四季の横顔も笑顔が消えてたな。

綺麗な整いすぎた顔だから、無表情だと少し怖い。


「……許しませんよ、絶対に」


それでも思い切って言う。誘拐犯に対してのせめてもの抵抗だ。


「そりゃ残念」

折り曲げた人差し指を目の周りで左右に動かして、しくしくと泣く真似をする四季はもういつも通りの意地悪な笑顔だった。


「さ、これ以上の邪魔は青波に怒られそうだから、行くわ」

「怒られてください」

「ひどっ〜」

そう言いながら、部屋を出て行った四季を見て思わず笑ってしまう。この監禁生活で唯一、私が軽口を叩ける相手だな。