恋の病に、堕ちてゆく。

今は1秒でも長くお父さんの声を聞いていたかった。

「詳しいことは言えないが早く解放してもらえるように交渉中だから、もう少し待っていて欲しい。まだ耐えられるか?」

「大丈夫!私のことは心配しないで。本当に酷いこととかされてないから!」

お父さんの方もそうかもしれないけれど、誘拐犯とは思えないほど丁寧に接してもらっている。

「ちゃんとご飯は食べるんだぞ」

「うん、食べてるよ。ちゃんと食べてる」

「必ず迎えに行くから、待っていてくれ。…もう切れと言われているから、切るよ」

「待ってる!待ってるからね!!」

「辛い思いをさせてごめんな…」

お父さんはそう言って電話を切った。

スピーカーからはなにも聞こえなくなった途端、堪えていた涙が頬を伝った。