恋の病に、堕ちてゆく。

背中に聴診器を当てながら先生は冗談混じりに言う。

「私はね、青波に言われた通り、法的外の治療ばかりして来た。今更もう普通の病院で働けるようなキャリも資格もないの」

「先生は私が初めてではないのですか?」

「あなたの他にも、病院に連れて行けない人々を何人も診て治してきたわ。イケナイことと分かってても、青波の傍にいたくて…」


自分も真っ当な道を踏み外すくらいに先生は青波が好きなのだ。同じように堕ちてしまったのだ。


「青波はキケンな男よ。あなたは絶対に好きになってはいけないわ」


"好き"になる?
ほんの少しだけ青波を好きになりかけていたと、思う。

でも私には青波と同じ道は絶対に歩めない。

「好きになりません、ここから出たらもう二度と会いたくもありません。私にとって彼はただの誘拐犯ですから」

きっぱり言い切る。
青波たちを警察に突き出すかはお父さんに任せるけど、私はもう青波とは二度と会いたくない。

甘い言葉と、人恋しい隙を狙って抱き締めてくるような卑劣な男とはもう関わりたくない。