校舎の裏は誰もいなくて、静かだった。
 ちょっとだけ緊張が解れる。

「沙羅ちゃん、あらためて、卒業おめでとう」
「ありがとうございます。あの、どうして学校に来たんですか?」
「……沙羅ちゃんに、伝えたいことがあったから」

 私に伝えたいことって「おめでとう」って言葉かな? わざわざそのために来てくれたの?

「あのさ、沙羅ちゃんの最後の制服姿、写真撮ってもいい?」
「はい」

 どこかに出かけるたびに涼太くんは私のことを撮ってくれていたから、撮られるのは最近やっとなれてきた。まだちょっと撮られている瞬間はドキドキするけれど。撮られている時は、涼太くんに見つめられているのをすごく意識しちゃうから。

 私が写った写真もピンク色に加工してくれて、その加工した写真のデータを毎回撮った日の夜にスマホで見れるように送ってくれた。

 その写真を見るのが大好きで。だって私は、涼太くんの写真の世界が大好きだったから。涼太くんの世界の一部になれたみたいで、撮ってくれた写真を見ると、いつも幸せを感じられる。