高校3年の1月。

 急に自分の撮ってる写真が、下手くそに思えてきた。こんな写真をSNSに載せて、俺は何をしているんだろう……気分が一度急降下してしまうと止まらない。誰から見られているか分からないSNSが怖くなって、面倒になった。とりあえず消さずにアカウントに鍵をかけ、更新を止めた。

 消さなかったのは、いつもいいねとコメントもくれる女の子がいて、彼女がくれたものを消すのが嫌だったから――。

 いいねとコメントをくれていた女の子が、沙羅ちゃんだ。

 俺はSNSの世界では〝陽〟という名前で活動していた。

 陽は、リアルな俺、佐藤涼太とは別世界の俺だった。だから家族や学校のやつら……誰にも教えてない、秘密のアカウントだった。

 なんで沙羅ちゃんだけに学校名を教えたのかは、自分でもよく分からない。気がつけば教えていた。

 『偶然ですが、私も同じ高校に通っています。私はひとつ下の2年生です』って返事が来たけれど。

 沙羅ちゃんと同じ高校だっていうのは、返事が来るもっと前、実は相互フォローで繋がる前から知っていた。