そんな我が子の姿に両親は大きなショックを受け、憔悴している。特に母親は寝込みがちになった。両親を気の毒にも思うし、疑っていたことを謝罪もされたが、一度失った信頼が謝罪だけで簡単に回復することはなかった。だから、家に戻るつもりはない。
 ルサレテは妹のことを思い浮かべながら小さく息を吐く。

(あのわがままな性格で外の世界でやっていくのは大変でしょうけど……自業自得ね)

 彼女は国外の修道院で一生涯世話になることが決まっている。俗世への執着を手放して、犯した罪を償うための修行の日々が待っている。ペトロニラの場合、前世で犯した罪もそこで償うべきだろう。
 しかし、散々ひどい仕打ちを受けたと言えども、彼女は曲がりなりにも妹だった。妹が追放されてどこかもやもやしてすっきりしないのは、長い間一緒に過ごした情が心の片隅に残っているからかもしれない。

 その後のシャロの話によると、ペトロニラは生まれたときから前世の記憶があり、被験者として美男子たちの攻略に相当夢中になっていたという。
 けれど、ゲームのプレイヤーではなくなって、泡が弾けるように一瞬で周りの信頼を失っていたところを見るに、ゲームが上手くても、元々の人格に問題があったのだと思われる。

 思案を巡らせながらひとり庭園を歩いていると、後ろからルイに話しかけられた。

「ルサレテ嬢。少しいいか?」
「は、はい。構いませんが、どうかなさいましたか?」
「その後……体調は大丈夫か?」
「ええ。特に問題ありません」
「このごろは激動だったから、精神的に参っているのではないかと気になった。困ったことがあればいつでも言うといい。力になる。それが僕がそなたにできる……せめてもの償いだ」
「償っていただく必要はありませんよ」