宿舎での事件からしばらくしたあと。
 ルサレテはひとり、学園の敷地内を歩いていた。今までは妹に嫉妬して嫌がらせをしていた意地の悪い令嬢として白い目を向けられていたが、最近は違う。

「見て。ルサレテ様だわ。……ずっと妹に引き立て役として利用されていたそうよ。遂には濡れ衣を着せられて、お可哀想に」
「私もペトロニラ様を信じて疑っていたけど、申し訳ないことをしたわ」
「きっと相当辛かったよね。同情する……」

 ペトロニラがルサレテの部屋に押しかけて窓から突き落とそうとしたことが知れ渡り、今ではすれ違う度に同情的な視線を向けられている。

 あれからペトロニラがどうなったかと言うと、騎士団が介入し、彼女はナーウェル侯爵家から除籍されて――国外追放となった。ペトロニラだけではなく、ナーウェル侯爵家も一部の財産が没収されている。
 少し前までは国一番の花嫁候補と謳われるほどもてはやされていたというのに、国を出て行くときは王族を騙していた悪女として、民衆から罵倒され、石を投げつけられ、惨めな姿を晒した。