「ちょっとっ、手を、離して……。苦し……っ」

 襟を掴まれているせいで、息が苦しい。離してと何度も懇願するが、彼女は解放してくれない。
 そのまま窓際まで追い詰められて、枠に腰が乗る。階段から落とされたときに、彼女の暴力的な一面を見ているため、底知れない恐怖心が腹の底に広がる。

 彼女は不敵に口角を持ち上げて言った。

「もう一度一緒に落ちれば……またプレイヤーが変わるんじゃないかしら……?」
「正気じゃないわ! こんな高さから落ちたら……2人とも死ぬから!」

 視線を窓の下に落とせば、かなりの高さを感じて喉の奥がひゅっとなる。ペトロニラの目は血走っていて、まともな状態ではないことを悟る。

「あんたにも前世の記憶ってあったりするの? 私はね……前世で――人を殺して自分も一緒に死んだの」

 彼女は武勇伝でも語るかのように話した。彼女は日本人の裕福な家庭の娘で、働きもせず、家でゲームばかりして暮らしていた。そして、あるとき知り合ったゲーム仲間に恋をし、勇気を出して告白をしたが振られてしまった。彼女は振り向いてもらえなかったことに腹を立て、相手を刃物で刺し殺してから、自分も後追いしたそうだ。
 とんでもない過去を打ち明けられて、背筋にぞくりと冷たいものが流れる。自分が犯罪者と姉妹として暮らしていたなんて。