でも、乙女ゲームだけが心の拠り所で。ロアンは自分と同じように病気を患っていて、共感しながらストーリーを読んでいた。一番好きなキャラだった彼のグッズを沢山集めていたし、本気で彼に幸せになってほしいと思っていた。

「前世で私もね、よく咳をしていたの」
「……ロアンと同じ病気?」
「ううん。たぶん違うけど、呼吸器がちょっと弱くて。他にも悪いところは色々あったんだけど。……だからね、ロアン様の気持ちが痛いくらいよく分かるの」

 先が見えない不安とか、体が思うようにならないことへの辛さとか、元気な人たちへの羨ましさだとか。それらは全部よく知っている。だから、助けてあげたいのだ。

「ナルホド。あの男の子が、前世の自分と重なったんだネ」
「まぁ、そんな感じ」

 たまたま心に止まったのがロアンだった。前世の自分は若くして死んでしまったけれど、同じ苦しみを抱える彼には、悲しい結末ではなく、幸せな結末を届けてあげたい。そのために、何かしてあげたいのだ。
 前世のルサレテが叶えられなかったことを、彼には叶えてほしい。そうしたら前世の自分も報われる気がして。