ジェイデンの告白に、ペトロニラはほんのりと頬を染めて、驚いた素振りを見せた。

「う、嘘……。ジェイデン様が私のことを慕ってくださっていたなんて……信じられないわ」

 本当に初めて知ったのか、それとも初心なフリをしているだけなのかは、本人しか分からない。
 そして、婚約解消されて落ち込む暇もなく、今度は母親から告げられる。

「こんなことがあった以上、大事なペトロニラの傍にあなたを置いておけないわ。この屋敷から出ていきなさい。ルサレテ」

 一方的に責められ続けたルサレテは俯き、膝の上でぎゅうと拳を握り締め、絞り出すように答えた。

「分かり……ました」

 そのとき、ペトロニラの唇が意地悪く扇の弧を描いたのを、ルサレテだけがはっきりと確認した。
 妹に裏切られ、婚約者を奪われ、家まで追い出されることになるとは、ひと月前までは夢にも思わなかった。

(こうなったのは全部――あの日の事件のせいだわ)

 ルサレテは目を伏せて、ひと月前のことを思い出した。



 ◇◇◇



 遡ることひと月。
 そのころのルサレテとペトロニラの関係は、決して悪いものではなかった。彼女は他の家族に接するように、いつも気さくで優しく、愛情を持って接してくれた。
 完璧な妹を羨むことはあっても、嫉妬を抱くことがなかったのは、ペトロニラがいい子だったからだ。

 その日は、ペトロニラの誕生日を祝うパーティーがナーウェル侯爵家で大々的に行われていた。前の月はルサレテの誕生日だったが、両親の気合いの入れ方はルサレテのときとは明らかに違い、企画の予算もペトロニラの方が何倍もかかっている。それもそのはず。彼女の誕生日を祝うために、名だたる貴公子たちが訪れて来るのだから。

 ペトロニラは学園で、四人の麗しい取り巻きの令息がいた。

 ひとり目は、王太子のルイ・フォーゲル。
 二人目は、宰相の息子エリオット・シュルツ。
 三人目は、騎士団長の息子サイラス・ベルガー。
 そして最後は、筆頭公爵の息子ロアン・ミューレンスだ。

 彼らは見目麗しく、身分も文句の付けようがないため令嬢たちの憧憬の的なのだが、全員もれなくペトロニラを慕っている。それが恋愛感情かまでは分からないが、親友と呼べるくらいには仲が良さそうに見える。

(わ……すごい数のプレゼント)