「じゃあな。」
「まっ、待って!」
去っていってしまいそうな凪くんを必死に繋ぎ止めた。
「何?」
振り返ったその表情は、前みたいに棘のある冷たい視線じゃない。柔らかい。
今なら、進める気がする。
「あの…えっと、お礼させてくれない…?」
何も計画なしに発した言葉に自分でもびっくりする。
「お礼って…そもそも勉強教えるのが看病してくれたお礼だっただろ」
困惑した様子の凪くん
困らせたいわけじゃないの。
「そう、だけど…」
そんなこと言ったら、私の看病だって、イヤリング探してくれたお礼だよ。
「ほら、凪くんの好きなパスタとか食べに行かない…?」
「……」
ああ…俯いて、困りきってしまった
この沈黙が痛い。
なんでこんなこと口走ったんだと、一瞬で後悔した。



