あ、風季に言ってないんだった…
「…この前お姉ちゃんのサイン断ったら女の先輩に押し倒されて。その時にイヤリング取れちゃって、凪くんが見つけてくれたの。」
ちらっと風季を見上げると、見たことのないほど苦しそうな表情を浮かべていた。
「…なんだよそれ。女の先輩に突き飛ばされたって」
「あ、これは凪くんにも言ってないよ?」
お姉ちゃんのせいで、みたいな捉え方されたら嫌だし。
「そうじゃなくて…突き飛ばされるとかよくあるわけ?」
「ないよ。この前が初めてだった」
風季がいつも守ってくれていたし、私も関係を隠している期間が長かったからか、あんな経験は初めてだった。
まさか突き飛ばされるとは思ってなかったもん。



