「しずく」
「っ、」
不意に名前を呼ぶなんて心臓に悪いよっ
「本当は?」
なんでそんな優しい目するの?
「イヤリング無くしちゃって探してたの…」
…凪くんには、バレちゃうんだね
「…あんなのどうでもいいだろ」
困ったような顔をした凪くん
「よくないの!私にとってとても大切なものなの!」
何があっても、無くしたくないの。
高校生になってみんなピアスをあけるけど、私はあのイヤリングをつけていたいんだよ。
「…あがれば」
霧沢家の玄関を開けて、ぶっきらぼうにそう言う凪くん
「いや、」
「いいから。」
有無を言わさない視線と、圧力
「お、お邪魔します」
「誰もいねぇから、そんなかしこまんな」
…誰もいないから、かしこまってるんだよ。
凪くんは何もわかってない。
霧沢家で凪くんと2人きりなんて、初めてかもしれない。



