「食べ物持ってなくて良かったな。」
「え、」
抑揚のない声に乗って放たれた言葉に、思わず声が漏れた
「凪くん、覚えてるじゃん」
「…っ、…」
「ねえ、どうして嘘ついたの?」
覚えてるなら覚えてるって言って欲しいのに。
どうしてそんな都合が悪そうな顔をするの?
「覚えてねぇって」
「でも今、」
「聞き間違いだろ。」
逸らされた瞳には、青白い街灯だけ写っていて、私なんて眼中になかった。
そんなあからさまな嘘をつくほど
突き放す理由が、私のことが嫌いな理由が知りたいよ…
一緒にいるのに別の場所にいるような虚しさに、胸が裂かれそうになった。



