風季にしか頼めないんだよこんなこと。
『何言ってんだよ。兄貴がいけよ』
「俺は…行けない。」
もう合わす顔もない。
しずく、もう待ってるんだろうな。
『…そもそもしずくと約束なんてどういうつもりだよ。』
「……」
『ずっとしずくを避けてたくせに、最近やたら話してるじゃん。兄貴が好きなのはつららなんだろ?』
「…そうだよ」
自分でついた嘘に、胸が抉られるような痛みがした。
『俺には、しずくのことが好きなように見えるけど』
核心をついたその言葉に大きく脈を打つ
昔から変に鋭いから侮れない。
「な、わけないだろ」
よかった、電話で。
じゃなければ全てがバレてたんじゃないかと思うくらい、俺きっとひどい顔をしてる。
『じゃあなんで、』
「雨、降りそうだから傘持って行ってあげてくれ」
『は?ちょ、』
戸惑う風季の声を遮るようにして、電話を切った。