今日のCMの打ち合わせだって、俺を中心に何人のスタッフがいた?
万が一俺が裏切るような事をしてしまえば、あの人たちの努力が水の泡になるんだ。
分かっていたはずなのに、中途半端にしずくに近づいて、もっと近づきたくなった結果がこれだ。
しずくにも被害が被る可能性だってあるのに、俺は自分のことしか考えていないんだ。
やっぱり俺はしずくに嫌われる必要がある。
ごめんしずく、今日はいけない。
多分これから先もずっと約束もできない。
もう近づけない。
だから、早く俺を嫌いになって。
俺はずっとしずくが好きだよ。
「はぁ…」
事務所の廊下を歩きながら、時計を見ると約束の時間はもう過ぎていて、
ガラスの向こうを見ると、今にも雨が降りそうだった。



