「芸能界に入る前に言ってた好きな人って、しずくちゃんのことなのか?」
見透かされる目に、どくんと胸が嫌な音を立てる
どう答えるのが、正解か分からない。
「…違います」
「はぁ…俺の目を誤魔化せるとでも思ってるのか。」
「でも本当にそんな関係じゃなくてっ、」
迂闊だった。こんな写真撮られるなんて。
常に警戒してきたはずなのに。
「それは、分かってる。ただ…こんな写真、事実ではなくても熱愛報道になりかねない。9月から主演だぞ。」
「すみません、」
頭を下げながら、走馬灯のような思いが駆け巡った。
俺はとことん馬鹿だ。
「今回はなんとか記事を止めることが出来たから、以後気をつけろ。」
芸能界に入る前に言われた言葉忘れたのか。



