好きだなんて、【完】


ねえ、なんでそんなに苦しそうな顔するの?




「じゃあね」




「待って」




通り過ぎようとしたとき、縋るように掴まれた腕に驚く




「風季?」





「行くなよ、兄貴のところなんて、」




もう泣き出してしまいそうな表情だった。




「…え、っと…」




「ごめん、困らせて。」




「大丈夫?体調でも悪いの?」




「…違うから。行ってこいよ、ばーか!」




やっと上げた顔は、さっきとは違っていつも通りだった。



…なんか拍子抜けした。



「バカって…!」





「ほら、いいから。」




そう言って私の腕を解放して、追い払うようなジェスチャーをみせた。



全く。心配して損したよ。




なんだ、いつも通りの風季じゃんか。




ならなんでさっき私の手を掴んで呼び止めたんだろう?



揶揄うため?