「あ、僕……あちらの駅でした」
「えっ!」
「気付いたらお二人について行ってしまいました。反対側ですのに」
「結構離れちゃったんじゃない?」
「大丈夫です! 良い運動になりますから」
「ホッシー、また明日」
「はい、和泉さんっ」

祈くんと別れ、私は和泉と二人で駅に向かって歩く。

「祈くんってやっぱり天然ドジっ子だよねー!」
「やっぱ夢咲ってバカだな」
「はぁ?」
「てか、今日のカラオケ……気になる奴はいたのか?」
「へ?」
「全員参加ではないとはいえ、うちのクラスの男子がどんな奴らか大抵分かったんじゃね?」
「あー! すっかり忘れてたね! 彼氏候補探しっ」
「やっぱり……」

まあ、今日はそういう気持ちじゃなかったというか。

「祈くんがクラスに馴染めるか心配でずっと気にかけて見てたからねー」
「相変わらずお人好しのおせっかい」
「でも、祈くんたくさん笑うようになって良かった!」
「じゃあ、ホッシーと付き合う?」
「だめだよ、あんなピュアピュアな子! 私みたいな邪な存在と付き合ったらだめ!」
「お前は邪でもねぇよ。結局未だ処女……」
「あぁ、言うなぁ!」
「やっぱり俺が初めて貰ってやろうか?」
「絶対に和泉は嫌!」
「勿体無いな。お前は一生後悔する事になる」

絶対後悔なんかしてやらない!

「その自信満々な顔が腹立つ。それに私は心から大好きな人じゃなきゃ嫌なのっ!」
「苗字の通り夢見る夢子ちゃんだな」
「和泉だって私とそうなるの無理でしょ。興奮できるのか、この私に」
「すげー質問。男はな、誰とでもできんだよ」
「学校の女子が和泉に言ってほしくないであろう発言ナンバーワン」
「でも、俺はちゃんと相手は選ぶからな。お前の5股してた元彼と一緒にすんな」

な、な、何言ってんだ⁉︎

「わ、私を和泉大好きな女子達と一緒にしないでっ。軽く見ないでよねっ」
「バカな女」
「バカって言う方がバカなんだからっ」
「はぁ、お前といたら尚疲れたわ」
「それはこっちの台詞だし!」