きっと、きっかけはわたしだ。
わたしがふたりの間に入ってしまった。
そこで彼等は、お互いに単なる幼馴染みだと思い込もうとしていた自分の想いに気付いた。
……わたしは、主人公ふたりが自分の恋心を自覚する為の。
いわゆる当て馬と云う役回りだったのね。
振り返ると、自分を嗤うしかないけれど……
これだけは断言してもいい。
あのふたりは、わたしの不在を待っていた。
わたしが美化委員会に出席して、ふたりだけで会える日。
6月にその密会は発覚したけれど、以前の委員会の日もふたりは会っていたのかも知れない。
誰にも見つからずにふたりだけで過ごせる場所。
校内のそんな場所を、わたしの隣で笑いながら。
キャメロンは、アイリスは。
ずっと探していた。
そして美術準備室という裏切りの部屋を探し当てて。
わたしには見えないところで、互いの視線を絡ませて。
都合を合わせて、連絡を取り合って。
……何回?何回ふたりは?
そこまで考えて気分が悪くなり、わたしは口元を押さえた。
直ぐに気付いてくれたグレイソン先生の助手の方が立ち上がり、窓を少し開けて新鮮な空気を入れてくれた。
ずっと存在感を消していて、先生の隣で静かにメモを取っていた男性だ。
御礼を言う代わりに会釈をすると「深呼吸をしてみましょう」と、やはり静かに微笑まれた。
わたしは言われた通りに深呼吸を何度かして、心を落ち着けた。
その様子を見ていたグレイソン先生がひとつ咳払いをされた。
「続けるのが無理なようでしたら、もう……」
「すみません、大丈夫です。
色々と想像してしまって……
あの……今から話すことは聞き流してくださいませ。
父が読む資料には載せないでいただきたいのです」
わたしのそんなお願いを聞き入れてくださったグレイソン先生は頷かれ、助手の方はメモをしていたノートを一旦閉じられた。
大丈夫……グレイソン先生は、わたしの味方だ。
強がる必要はないので、素直に打ち明けた。
「キャメロン・グローバーは騙すつもりはなかった、婚約したかったのは本気だった、と言いました。
またわたくしを騙す為の、誤魔化す為の嘘を聞かされました。
あんな姿を見せられたのに、また簡単に騙せると馬鹿にされたのかと思うと……
ですが、そう侮られてしまったのは仕方がないのです。
わたくしは……わたしは、あんな男を信じて、一度は共に生きようとしたのですから。
わたしのような、人を見極める力もない愚かな人間が、ハミルトンを継いでもいいのかと。
……それが頭から離れません」
わたしがふたりの間に入ってしまった。
そこで彼等は、お互いに単なる幼馴染みだと思い込もうとしていた自分の想いに気付いた。
……わたしは、主人公ふたりが自分の恋心を自覚する為の。
いわゆる当て馬と云う役回りだったのね。
振り返ると、自分を嗤うしかないけれど……
これだけは断言してもいい。
あのふたりは、わたしの不在を待っていた。
わたしが美化委員会に出席して、ふたりだけで会える日。
6月にその密会は発覚したけれど、以前の委員会の日もふたりは会っていたのかも知れない。
誰にも見つからずにふたりだけで過ごせる場所。
校内のそんな場所を、わたしの隣で笑いながら。
キャメロンは、アイリスは。
ずっと探していた。
そして美術準備室という裏切りの部屋を探し当てて。
わたしには見えないところで、互いの視線を絡ませて。
都合を合わせて、連絡を取り合って。
……何回?何回ふたりは?
そこまで考えて気分が悪くなり、わたしは口元を押さえた。
直ぐに気付いてくれたグレイソン先生の助手の方が立ち上がり、窓を少し開けて新鮮な空気を入れてくれた。
ずっと存在感を消していて、先生の隣で静かにメモを取っていた男性だ。
御礼を言う代わりに会釈をすると「深呼吸をしてみましょう」と、やはり静かに微笑まれた。
わたしは言われた通りに深呼吸を何度かして、心を落ち着けた。
その様子を見ていたグレイソン先生がひとつ咳払いをされた。
「続けるのが無理なようでしたら、もう……」
「すみません、大丈夫です。
色々と想像してしまって……
あの……今から話すことは聞き流してくださいませ。
父が読む資料には載せないでいただきたいのです」
わたしのそんなお願いを聞き入れてくださったグレイソン先生は頷かれ、助手の方はメモをしていたノートを一旦閉じられた。
大丈夫……グレイソン先生は、わたしの味方だ。
強がる必要はないので、素直に打ち明けた。
「キャメロン・グローバーは騙すつもりはなかった、婚約したかったのは本気だった、と言いました。
またわたくしを騙す為の、誤魔化す為の嘘を聞かされました。
あんな姿を見せられたのに、また簡単に騙せると馬鹿にされたのかと思うと……
ですが、そう侮られてしまったのは仕方がないのです。
わたくしは……わたしは、あんな男を信じて、一度は共に生きようとしたのですから。
わたしのような、人を見極める力もない愚かな人間が、ハミルトンを継いでもいいのかと。
……それが頭から離れません」