「勝手に言いたいことだけ言って、帰るな」

「だって貴方にはもう会ってはいけないと、オースティン様から言われたから。
 最後にふたりだけで会えて、気持ちを伝えることが出来たから、それでわたしはもう……」

「……君は兄上のことが好きだっただろ?
 だから、俺は今でもそうだと」


 キャメロンは今までわたしを、お前と呼んでいたのに、君と変えてきた。
 その雰囲気もこれまでとは違い、なんだか甘い。
 これは女性として意識しだしたってことよね?
 だからわたしもいつもより、しおらしくしてみせた。


「昨日、貴方への想いに気付いたら、オースティン様に対する気持ちは単なる憧れだったと分かったの。
 本当の愛とは全然違うものだって」

「本当の愛?」

「相手に幸せになって貰いたいと思えるのが、本当の愛だと思うの。
 キャメロンには幸せになって貰いたいの、それがわたし以外の人と結ばれることであっても」


 自分でもどうしてこんな風に、スラスラとキャメロンへの愛を語れるのか不思議だった。
 言葉にすればする程、気持ちは熱くなっていく。
 酔っぱらってしまった時のように、それはふわふわとしているのに、熱く。
 


 ……このままいけばキャメロンはシンシアと婚約して結婚する。

 でも本当はね、シンシアが貴方と結婚するのは条件が合ったからで、恋をしたからじゃないの。 
 純粋な気持ちで貴方を愛しているのはわたしなの。
 そのことに、いつか貴方は気付いてしまうでしょう。
 
 シンシアの愛は本物ではなかったと。
 そして思い出すの、一途な気持ちを伝えてくれた幼馴染みをどうして自分は選ばなかったのか、って。
 後悔しても、もう時は戻らない、なんて……
 なんて悲しい物語なんだろう。



 そこまで想像して。
 結ばれなかったわたし達が可哀想で。
 諦めるしかない、離れるしかない、わたしの恋心が哀れで。


 悲しくなって自然に涙がこぼれてしまったわたしを、キャメロンがいきなり抱き締めた。



「本当に?本当に俺が好きなのか?」 


 確認されて何度も頷くわたしを、キャメロンは抱き締めたまま離さない。




 あぁ、シンシア……ごめんなさい。

 わたし、彼を取り戻せたわ。