ただ貴方が好きなの、と。
 ただ会いたかったの、と。


 想いを込めて何度も口にすると、キャメロンの頬が赤く染まった。
 そのまま腕を取られて、誰にも見つからないように、図書室に連れていかれた。


 いつも軽口しか交わさなかった、わたしとキャメロン。
 こんな風に気持ちを伝えたことなんてない。
 どうか、これからはわたしのことを女の子だと見て欲しい……
 だから、わたしは健気に言ってみる。


「シンシアとの仲を邪魔するつもりはないの。
 あの子はわたしの大切な親友だし、わたしは貴方のことも大切に思ってる。
 本当に大好きなふたりには幸せになって貰いたいの」 

「そう思っているなら、どうして今頃そんなことを言い出すんだ。
 聞かされた俺の身にもなってくれよ……」


 困っている様なキャメロンだけど、その口調からは拒否は読み取れない。
 確かに困惑はしているだろう。
 だけど彼の反応を見たら……いける、そう確信した。

 やり方を間違えなければ、キャメロンはわたしのものになる。



「領地持ちの伯爵家に婿入りするのが貴方の望みなんだって知っているから……
 邪魔はしたくない。
 貴方には誰よりも幸せになって貰いたいの。
 だけど密かに貴方を想うことだけは許して欲しい」

「密かに?」

「わたしが貴方を愛しているなんて余計なことはシンシアには言わないし、貴方も言わないで」

「言えるわけがないだろう!」


 シンシアには言わないここだけの、ふたりだけの話にすることで、わたし達は共犯者になる。

 ねぇ、気付かないの?
 最初にシンシアにちゃんと話しておかないと、これからはあの子に秘密を持つことに慣れてしまうのに。



「……俺は昨日、シンシアにプロポーズしたんだぞ。
 こんな話聞かせられない!」

「わかってる、婚約したいとお兄様に言ったんでしょう。
 わたしは貴方に告白出来ただけで満足なの。
 これ以上は求めないから……もう帰るね」


 わざと、混乱したままのキャメロンに帰ると言ってみた。
 お金も持たずに家を飛び出して会いに来たわたしを、キャメロンがそのまま帰すはずがないのを、わかってて。


 案の定、図書室から出ようとしたわたしの手を、キャメロンが掴んだ。