場所は王都で流行りのカフェ。
 2週間前にはキャメロンが予約しておくと言う。


「カーライル嬢の好みなのかはわからないけど、取りあえず女の子に人気のカフェなら間違いないな」

「え、びっくりした……キャムってそんなにマメなひとだった?」
 
「お前、本当に失礼な奴だな。
 俺だってもう17だ。
 デートだって何回もしたことがある。
 せっかく会ったのに何処にも入れなくてあたふたするなんて、一番女の子に馬鹿にされるパターンだろ」



「デートだって何回もした」と言うキャメロンの言葉が引っ掛かった。

 いつ?誰と?
 デートするのは恋人とでしょ?
 いつ居たの?
 そんなの知らない、聞いてない。


 今まで、わたしには内緒にしてたの?
 普段遊んでる女の子達となら、デートなんかしないよね?
 ただ、何処かへ遊びに行く関係でしょ?



 動揺したことを悟られたくなくて、殊更に淡々と話すことにした。
 
 

「じゃあ、テーブルは2つ予約して。
 お出掛けの際には、シンシアには侍女が付いてくるから」


 そんなにデートに慣れてるなら、いつもの女の子達とは違う、侍女を従えている深窓のお嬢様のシンシアとも上手くやれるよね。

 わたしとのお出掛けにさえ付いてくるあの侍女。 
 何をそんなに警戒しているのか知らないけれど、あの目付きが気に入らない。



「あー、今じゃ希少な、常にお付きが目を光らせていて、ひとりでは行動出来ない地方貴族のご令嬢か。
 でも真面目に付き合うなら、そういう古くささもいいと思うな」


 真面目に付き合うなら?
 まだ実際に会ってもいないシンシアと、真面目に付き合うと決めてるの?



「……シンシア本人は自立してるつもりだけれど、何だかんだ言っても、大事に囲われてるお嬢様なのよ。
 貴族学院の3年間はお父様だけが領地に居て、王都のハミルトン邸にお母様とふたりで住んでるの。
 何処へ行くのだって、誰に会うのだって、侍女が付いてくるんだから。
 寮に入るなんて、とんでもないんでしょうね」


 
 シンシアは気軽に付き合える子じゃない。

 そこのところだけは、キャメロンに念押しした。