聞きたいことも沢山あるけれど、我慢した。

 シンシアは、伯爵家の後継者としての意識が強すぎるから。
 そこのところを理解してくれる男性じゃなきゃ、うまくいかないと思う。
 結局はご両親が見繕ったお相手と恋愛したつもりになって、結婚するのがいい。


 まあ、シンシアが誰と結婚しようが、わたしには関係ないと言えばないから、好きにしたらと思った。


「貴女の思う理想のお相手に、うまく巡り合えたらいいわね?」

「……そうね、ありがとう」

 
 もうこれ以上この話題を続けても仕方ないし、わたしがそう言うと、シンシアがお礼を言った。
 口ではありがとうなんて言ってても、シンシアの少し冷めた表情に、あぁまたかと思う。
 

 シンシアは田舎だけれど領地持ちの伯爵家の後継者で。
 わたしは代々王城勤務の文官家系の、領地無し子爵家の娘で、弟が居るから他家へ嫁ぐ。


 高等部から貴族学院に入学してきた彼女とは、1年生2年生と続けて同じクラスになって、親友と呼べるような間柄になった。
 けれどわたしとは育ってきた環境が違っているから、時にこうして意見が分かれてしまって、わかりあえない。

 
 だからシンシアと同じ様な価値観を持ってる地方貴族のご令息と結婚するのが、一番いいんじゃないかなと思っていた。


 それはそれで思うところもあるけれど。
 カーライル家の結婚観を批判するようなつもりはなかったのに立ち入り過ぎて、少し気を悪くさせてしまったかも、とわたしは気になった。
 こんなことで、シンシアとは気まずくなりたくない。

 
 何と言っても、将来の伯爵様だもの。
 仲良くしておかないとね。



 だから……お詫びのつもりで。
 彼女の機嫌が直ればと、軽い調子で言ってみた。


「貴女のお婿さん候補、わたしの幼馴染みのキャメロン・グローバーはどう?
 彼はお薦めよ」