「……かれし、でよかった?」
藤崎が小さくあたしに聞いてきて、あたしは思わずえ?と聞き返す。
「付き合ってる、でいい、んだよな?」
……そっか。
藤崎も、不安だったんだ。
「彼氏で、お願いしたいな」
恥ずかしくて顔が見れなかったし、電車がホームに駆け込む音と重なって、あたしの声が聞こえたのかわからなかったけど。
そっと藤崎がまたあたしの小指に自分の指を絡めたから。
きっと、伝わってるよね。
ねえ、藤崎。
あたし、藤崎のことこれからも知りたい。
知らないこと、まだまだいっぱいあるだろうから。
藤崎も?
藤崎も、そうなのかな?
ケンカばかりだったあたしたち。
これからもきっと、ケンカばかり。
付き合っても犬猿の仲も、変わらないかもしれない。
でも。
犬と猿だって、たまには仲良くなるでしょう?
ケンカすることが当たり前になってて、腹が立つこともたくさんあるけど。
その時間が実はちょっぴり楽しくもあったりして。
おかしいかもしれないけど、それがあたしたちの恋の形なのかもね。
電車に乗りこんで席に座っても、あたしたちの指は繋がったままだった。
一つだけ絡まった指。
今のあたしたちはまだ、これが精一杯だけど。
ゆっくり進んでいきたいな。
いつか照れることなく、すべての指をぎゅっと握れるように。
fin.



