好きを君に。


「あれ? 遥ちゃん?」
不意に声をかけられて、あたしと藤崎はすごい勢いで絡んでいた指を離した。
声の方向を見ると、千紗ちゃんと男の子が立っていた。

「千紗ちゃん」
「やっぱり遥ちゃんだー! えー! こんなとこで会うなんて!!」
パタパタ駆けてきた千紗ちゃんは、藤崎の姿を見てははあ、と訳知り顔をした。
「藤崎、千香の妹で千紗ちゃん」
「初めましてー! お姉ちゃんがいつもお世話になってます! この人は遥ちゃんの彼氏?」

か、かれし……!
いわれるとすごい破壊力だ。

「藤崎っていいます。一応、彼氏、かな?」
照れくさそうに言う藤崎に、一応ってなにってあたしは思ったが言葉に出来なかった。
千紗ちゃんがその言葉にあたしの手を取って目を輝かす。
「遥ちゃん、おめでとう。お姉ちゃん教えてくれないからどうなってたか気になってたの」
「あ、ありがとう。千紗ちゃんは、あのひと…」
向こう側であたしたちをじっとみている男の子を見ると、千紗ちゃんはふふと笑ってあたしに耳打ちした。
「千紗も大成功したんだよ。一発逆転ホームラン」
「ええー! すごい!」
ブイサインをする千紗ちゃんにあたしも嬉しくなってはしゃいでしまう。

「ありがとう。じゃあ千紗、そろそろ戻るね。藤崎さん、遥ちゃんのこと幸せにしてねー!」
にこにこ笑いながらいうと、千紗ちゃんはまた男の子の元に去っていった。

相変わらず、嵐みたいだなあ。

「ぜんぜん似てないな、如月と性格」
「ああ、うん。元気だよね、千紗ちゃん」

ホームに電車が来るアナウンスが流れる。
もう帰るんだな、とまた寂しい気持ちになっていると。