――――!
その、瞬間。
触れたはずの手は消えて、藤崎が驚いたようにのけぞった。
あ、やば……。
勝手に願掛けして勢いのままいってしまったけど、すごく恥ずかしいことをしていた気がする。
なんて言い訳しようかぐるぐる頭を悩ませて、無言になってしまう。
なにか、話しな……
――――っ!!
身体中に電撃が駆けぬける。
全神経が小指に集中する。
藤崎が、指を。
あたしの小指に、自分の小指を。
絡まる、指。
藤崎にそっと目をやると、あたしから顔を背けて逆方向を見ていた。
表情は見えなかったけど、髪の合間から見える耳は真っ赤に染まっていた。
それがどこかくすぐったくて、嬉しくて。
「すき」
自然と、漏れ出てしまった。
藤崎の頭がすごい勢いであたしの方に向き直って、目を白黒させる。
あたしが、聞こえた? と上目遣いで見ると、藤崎は次の瞬間にくしゃっと相好を崩して頷いた。
好きな人が、気持ちを受け入れてくれる。
両思いって、すごい。
「初めて言われた」
「初めて言いました」
「返事、バラだったから」
「ロマンチックじゃん」
本物のバラでもなく、コサージュのバラで返事をするなんて、少女漫画のストーリーでもそうそうないはずだ。
「ものはいいようだな」
くすくす笑う藤崎に、あたしもつられて笑った。



