好きを君に。


「そろそろ並んどくか」
藤崎が立ち上がって、ホームの乗車口へ向かう。
あたしも慌てて藤崎についていった。

ホームに二人で並んでたつ。
知らない間に少しだけ視線を上げないと見れなくなった顔。
顔をじっと見ることも出来なくて、自然と下を向いた。

目に止まったのは、藤崎の手だった。

少しだけ触れたことのある手。
あたしより大きくて少しだけ角張っている手。

男の子の、手。

もし、この手が握れたら。
触れることが出来たら、もう一度勇気を出してみよう。

まるで願掛けのようにそんなことを思って、あたしの手は自然に伸びていった。




あと三センチ。





あと二センチ。




あと、一センチ。




お互いの指が少しだけ、触れた。