好きを君に。



藤崎は、ああ、とつぶやいて少し考え込む。 
「サッカーが強いから、てのもあるけど」
そして、表向きの理由じゃないことも話してくれようとしている。
「北浜高校の近くにじいちゃんが住んでるんだ」
「おじいちゃん?」
「そう。頑固なじいちゃんなんだけどな。もう結構歳なんだけどさ、なんでもひとりでしようとするんだ」
「うん」
「俺じいちゃん子だからさ。ちょくちょく様子見に行きたいんだけど、遠いから。学校帰りだったら寄れるじゃん」
照れくさそうに笑いながらいう北浜高校を選んだ理由に、あたしは胸が打たれた。

あたしみたいに近いとかじゃなくて、ちゃんと意味があって選んでるんだ。
まだ、あたしが知らないこと沢山あるんだろうな。
これから、知らないことを一つずつ知っていることに変えていけるかな。

「おじいちゃんも、喜ぶね」
「受かったって言ったらちょっと嬉しそうだった気もする」
藤崎の優しい顔を見つめてたら、あたしもなんだか嬉しくなって。

藤崎、あたしね。
藤崎の好きなところ、わかったかも。

すぐ人のことからかうし、失礼なことたくさんいうけど。
部活でだれよりも大きな声で士気をあげていたり。
受験直前なのにお見舞いに来てくれたり。
友達の恋の応援したり。
おじいちゃんのために遠い高校受験したり。
そういう、誰かのために行動できるところが好きなんだと思う。

ああ、今なら。
今なら、いえるかもしれない。

「ふ…」
「高坂は? やっぱ東高、近いから?」
あたしが出した勇気はあっさり出鼻をくじかれてきえていく。
不思議そうにあたしをみる藤崎にごまかすように頷いた。
「そ、そう。近いし制服可愛いし」
近いだけと思われるのもなんか恥ずかしくてとってつけてみたけど、制服可愛いも恥ずかしいかもしれない。
「じゃあ制服姿みんの楽しみだな」
にかっと笑う藤崎に、えっ。とびっくりしてしまう。

それは今までとは違う距離感で、恥ずかしい。