コサージュを見つめていた藤崎が立ち上がって、あたしも合わせて腰をあげる。
その瞬間、藤崎があたしの手首を掴んで、グイッと自分の方に寄せた。
自然と藤崎の胸におさまってしまう。
え!?
え!? なにこれ!?
まさかの行動すぎて頭はパニック状態だった。
桐野のときとは、違う。
あの時よりもずっとずっとどきどきして、恥ずかしい。
でもそれは一瞬で。
すぐに引き離された。
温もりの余韻だけが残って、あたしは少し名残惜しかった。
もしかしたらあたしは変態かもしれない。
「ごめん」
いや、あやまられても。
恥ずかしかったけど、うれしかった。
なんていえるわけないし。
「…………」
「…………」
「何笑ってんだよ」
少し冷静になってきたせいか、藤崎の真っ赤な顔をみたら笑いがこみあげてきた。
「や、ごめ……」
笑っちゃダメだと思うほど笑えてしまう。
それをみた藤崎も笑って、あたしたちはしばらく笑いあった。
「で、結局怒った理由教えてくんねーの?」
話が突然戻って、「え!?」とあたしはすっとんきょうな声を上げる。
だってもういったも同然なのに!
藤崎はにやにやしててわかってやってることがわかる。
「……鈍感」
「鈍感じゃねえし」
「どこが!」
「高坂よりマシだし」
「あんただけにはいわれたくないわ」
あんた以外はあたしの気持ち気づいてたし。
「そのセリフ、そっくりそのまま返す」
「はあ?」
結局いつもの言い合いが始まりそうになって。
でもそれが落ち着くなんて、あたしはおかしいのかもしれない。
こっちのほうが性に合ってる。なんて思うの、いけないのかな。
かわいくない? あたし。
色気の欠片もないけど。
あたしたちは、そんな関係が今は心地いい。



