びっくりするほど長かった沈黙の後、藤崎が少しだけ顔を上げてあたしと目を合わした。
「……高坂が、好き、なんだと、思う」
世界が鮮やかに変わって、あたしは目を瞬かせた。
あたしを見つめる藤崎の顔はさっきよりも真っ赤で。
でもあたしの顔も負けず劣らず真っ赤になっているはずだ。
「……なんか、いえよ……!」
なにもいうことができなかったあたしに、藤崎が耐えきれなくなったのかそういって顔を背ける。
それが引き金となったのか。
あたしの頬を雫がどんどん伝っていく。
やばい……!!
あたしはそれをみられたくなくって顔を覆った。
「え?」
あたしが泣いたことに気づいたらしい藤崎が慌てた声をあげる。
ごめん。は多分、声になってない。
泣いたら困らせることなんてわかってるのに止まらない。
だって、うれしくて。
死んじゃいそうなくらい、うれしくて。
あの藤崎があたしを好きって。
喧嘩ばかりしてた藤崎が、あたしを好きって。
桐野に協力してたのに。
これ、夢じゃないよね?
「な、なんで泣くんだよ」
泣いているあたしにおろおろしたような藤崎の声が聞こえる。
それがおかしくて、あたしは涙を何度も拭いながら笑ってしまう。
「俺の気持ち、迷惑、とか?」
あたしはぶんぶんと首を振った。
そんなことあるわけがない。
ずっとずっと待ち望んでいた言葉だったのだから。
「どこを、どうしたら、そうなるわけ?」
しゃくりあげながらそういったけど、こんな時でもあたしはかわいくない。
素直になるなんて、無理かも。
「じゃあなんで、泣いてんの?」
「それは……」
きっと、今が勇気を出すときだ。
藤崎が好きだからだよって。
うれしくてなみだがとまらないのって。
ごくんと唾を呑みこむ。
ひどく耳鳴りがして、心臓がうるさい。
好きな人に好きというのは、こんなにも勇気がいることなんだ。
「藤崎、あたしね……」
伝えたい言葉は、たった二文字。
「藤崎のこと……す、す…」
――いえない。
ここまできて、いえない。
喉元まででかかっているのに。
どこまで意気地なしなんだ、あたしは。



