「……いっただろ?」
あたしとは視線を合わせないまま、言いにくそうに言葉を続ける。
「俺は、きりにお前をとられたくなかったの」
『高坂をとられたくない』
さっきの言葉が頭の中で再生されて、口が勝手に緩む。
藤崎がまさかそんなことをいってくれるなんて夢にも思わなくて。
心がまた勝手に期待する。
ねえ、藤崎。
それは一体、どういう意味?
「それって、どうして?」
ようやく絞り出した一言に、藤崎が目に見えて頬を染めていく。
「だから、その……」
そして、きっとあたしの頬も染まっていってるに違いない。
「いわねー」
藤崎が頭をかきながらつぶやく。
「な、なによ。気になるじゃん」
「気になっとけ」
「なにそれ!」
叫んだあたしに、藤崎がうるさそうに耳をおさえる。
「うっせーな」
「うるさくないし!」
結局いつもの雰囲気になりそうになったとき、不意に藤崎とあたしの目が合った。
数秒間、見つめ合う。
いつになく真剣な瞳があたしをみていて、どきどきした。
「……なんだと思う」
「え?」
声が小さすぎてあまり聞き取れなくて思わず聞き返すと、藤崎は顔を真っ赤にして、その場に座り込んだ。
「もう一回なんて、いわねー」
そのまま腕の中に顔をおさめてしまった。
あたしもしゃがみこんで、藤崎の顔をのぞきこもうとしたけど顔は見せてくれなかった。
「なんていったか、教えてよ」
もしかしたら、ってあたしの心が期待する。
何度も打ち砕かれてもやっぱり期待してしまう。
だって、あたしはあんたが大好きなんだもん。



