「ごめん」
桐野が見えなくなってから、思い出したように藤崎があたしを離す。
「あ、うん……」
温もりの余韻が残っていてどきどきしながら、視線が自然と落ちる。
話すのは、あの想いをぶちまけた日以来だ。
長い沈黙だった。
お互いに言葉を探して、でも何を話せばいいか分からない。
その沈黙を破ったのは、藤崎だった。
「俺さ、高坂に怒られた理由、いまだにわかんねーんだけど」
「――――!?」
予想外の角度から責められて、あたしは言葉を失う。
だってなんでいま!
なんでいまそれを蒸し返すの!?
てかあれだけいってわかんないとか鈍感すぎじゃない!?
「……なんで怒ってたわけ?」
しかもそれをあたしにいわせようってか!
あたしをのぞきこむ藤崎に心臓がどきどきとしてしまう。
そんな顔は、ずるい。
「えーと……」
いえるわけがない。
あんたのことが好きなのに、桐野に協力してたから、なんて。
いや、ここで勇気をだしたらいいのか。
あんたが好きだからに決まってるって。
「……あ、あんたこそ、なんで桐野に協力してるくせに、あんなことしたのよ」
結局口からはその言葉が出てこなくて、疑問をなげかけてしまう。
本当にあたしは意気地なしだ。
あたしの切り返しに藤崎は言葉を濁し、気まずそうに目を逸らした。



