好きを君に。


でも、次の瞬間。

あたしの前にあった温もりは消えて、後ろにすごい勢いで引っ張られた。
首元に腕があって、今度は後ろに誰かの気配と息遣いを感じる。

状況の展開に全くついていけず、あたしの脳内は大混乱していた。

いま、どうなってる?

「なに? 悠哉」

そして。
目つきが鋭くなった桐野が発した名前に、あたしはさらに混乱することとなった。

名前を聞いた瞬間耳を疑ったあたしは、首をわずかに上に向けて、後ろにいる人物を見た。
そこには、かつてないほど至近距離にいる藤崎がいた。

ーー!?
なんで!?

今の状況を理解したあたしの心臓はさっきよりすごい速さで鳴りだした。
身体中に熱が走っているのかと思うくらい熱くなってくる。

「きり、俺……」
「俺に、協力するっていったよな?」
藤崎の言葉を遮って、桐野はにっこり笑顔を浮かべて冷たい口調でいった。
「うん。そういった」
「じゃあ邪魔すんなよ」
突き放すような厳しい口調はさっきまでの優しい桐野とは違う。
藤崎は逡巡するように目をさまよわせたけど、決意を固めたように桐野をみた。

「俺、耐えられなかったんだよ」
「耐えられなかった?」
「きりと高坂が抱き合ってる、とこ」
その発言は予想もしてなくて、あたしは思わず口を覆った。

それは、つまりどういうことなの?

「ごめん、きり。
 俺、協力するって言ったけど、
 高坂をとられたくない」
力強い言葉が、あたしの鼓膜を震わせる。

"高坂を、とられたくない"

これは、夢なのかもしれない。
頭の中で何度も繰り返される藤崎の言葉が、夢か現実なのかわからなくなる。